ヴェネツィアで行われる大事な祭りの一つは「サン・ロッコ祭」(ロッコ聖人の祭)です。毎年、8月16日に行列やカトリックのミサがあります。
1576年のペスト流行(レデントーレ教会の建設のきっかけとなったのと同じ疫病*)による壊滅的な被害があり、ヴェネツィア人は疫病の収束を祈りロッコ聖人にも礼拝しました。
*詳細はこちらに:ヴェネツィアの有名な「レデントーレ祭り」
疫病収束の後、この祭りは重要にものとなりました。同年(1576年)8月16日には、ヴェネツィア共和国上院からロッコ聖人記念として定められ、この祭りには当時のドージェ(*)も参加しました。ドージェは上院のメンバー、貴族の人たち、様々な大使と一緒にサン・ロッコ教会に行き、ミサの後に教会からサン・ロッコ広場を横切って、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ(大同信組合)の本部が入っている建物まで行列をしました。
(*) 翻訳者注:ドージェはイタリア語でのヴェネツィア共和国の元首
そして、そこでスクオーラ・グランデが保管している宝物を鑑賞し、ロッコ聖人の聖遺物を崇拝しました。スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコは1478年に生まれた信徒の集団です。裕福な人々が集まるこの集団はロッコ聖人を讃え、サン・ロッコ教会建設後の16世紀の初期には、他の建物の建設も依頼しました。スクオーラ・グランデがほぼ完成した1546年には、かの有名なティントレットによる装飾で彩られることになりました。
通常、巡礼者を厳しい日光から守るため、この祭りの数日前に、「ドージェのテント」と呼ばれる、大きな仮設テントが作られました。当初「ドージェのテント」は地面に置いた木製の柱で支えるだけのものでした。その後は彫刻された石のブロックやイストリア石のブロックも使われ、そこに木製の柱を入れこむようになりました。また、このイベントには色々なアーティストや画家も参加し、自分の作品を見せていました。この仮設テントの構造は非常に魅力的で、多くの画家はその絵画的な景色を描き、複写しました。その複写の中で、一番有名なのはカナレットの絵画で、現在はロンドンのナショナル・ギャラリーで見ることができます。
現在も、毎年8月16日は、ヴェネツィアの人々がロッコ聖人を讃える日です。午後5時にフラリ広場からサン・ロッコ教会まで行列が始まり、そこで厳粛なミサが行われます。同じ日の夜、サン・ロッコのスクオーラ・グランデのホールでコンサートも行われ、サン・ロッコ賞の授与が行われれます。