カ・ペーザロ東洋美術館の歴史

5 October 2021

カ・ペーザロ、建物の歴史

ヴェネツィアの東洋美術館はカ・ペーザロ宮殿の4階に位置しています。

カ・ペーザロ宮殿は17世紀後半、裕福なペーザロ家の依頼により建てられました。サルーテ教会とカ・レッツォーニコと同じく、ヴェネツィアのバロック建築家バルダッサーレ・ロンゲーナによるものです。1659年に工事が始まり、1679年にはカナル・グランデに面するファサード(建物の正面)の3階まで完成していましたが、1682年にロンゲーナが死亡したため、宮殿はまだ未完成でした。

そのため、カ・ペーザロ家はジャン・アントニオ・ガスパーリに建物の完成を委託し、1710年に元々の計画通りに完成しました。ロンゲーナはルネッサンスの巨匠の一人であるヤコポ・サンソヴィーノの古典的スタイルに影響を受け、豪華でも調和がある建築を造りました。その表現は、カナルグランデに面するファサードに見ることができます。宮殿の天井は有名な芸術家(バンビーニ、ピトーニ、クロサト、トレヴィサーニ、ブルサフェローなど)の手により、フレスコ画や油絵で豊かに装飾されました。そしてその中には、ティエポロの「ゼファーとフローラ」が描かれた天井もありましたが、1935年にカ・レッツォーニコ美術館に移転されました。

ペーザロ家は質の高いアートコレクションを所有していました。しかし、ペーザロ家最後の一人がなくなった1830年までに、財産は散らばってしまいました。宮殿は当初グラデニゴ家の財産になり、その後、修道士のものとなり学校として使用されました。そして、ベヴィラックア家が購入した後、フェリチータ・ベヴィラックア・ラ・マサ公爵夫人の財産となり、1898年にヴェネツィア市に寄贈されました。

カ・ペーザロ東洋美術館の誕生

ヴェネツィアの東洋芸術館は、日本の江戸時代(1603-1868)の美術に関して、ヨーロッパにおける最大のコレクションの一つです。コレクションの所有者である政府と、カ・ペーザロ宮殿の所有者であるヴェネツィア市との合意によって、カ・ペーザロ宮殿の4階に位置しています。

このコレクションは、バルディ伯爵のエンリコ・ディ・ボルボン王子のお陰で存在しています。1887年から1889年まで、ブラガンザ家出身の妻、アデルゴンダと数人の従者を連れて、長期間世界中を旅し、インドネシア、東南アジア、中国を訪れ、そして日本には約9ヶ月滞在し、3万点以上の作品を購入しました。

エンリコ・ディ・ボルボーネがヴェネツィアに戻った後、主に冬の間に住んでいたヴェンドラミン・カレルジ宮殿の4階にコレクションを置いていました。
1905年に彼が亡くなると、コレクションはオーストリアのトラウ社の手にわたり、コレクションの作品は販売されてしまいましたが、それは第一次世界大戦が勃発して会社の資産が取り上げられるまでのことでした。

第一次世界大戦は終わり、全ての作品は戦争被害の賠償金としてイタリア政府の財産になりました。そして、1925年に政府とヴェネツィア市の合意により、コレクションはカ・ペーザロ宮殿に保管されることになりました。

エウジェニオ(ニーノ)・バルバンティーニが、美術館の担当者として、スタッコ(*)とフレスコ画のある歴史的な邸宅に、新しい東洋美術館をつくるという難しい任務を担いました。3年間で、コレクションをヴェンドラミン・カレルジ宮殿から移し、カ・ペーザロ宮殿の改造と美術館の設立を成し遂げました。そして、1950年までバルバンティーニは館長を務めたのです。東洋美術館は、1928年5月3日に開館しました。江戸時代の日本美術を中心に、中国、インドネシア美術も展示されています。
(*) 翻訳者注:スタッコは化粧漆喰とも呼ばれている建築材料です

日本をテーマにした部屋では、江戸時代の大名や武士が行列の際に身につけていた武器や甲冑、漆で作られた鞍や鐙、婦人用の珍しい輿(こし)、そして紙や絹に描かれた絵画や、華麗な刺繍が施された貴重な衣服を見ることができます。

他の二つの部屋には、裕福な商人や大名の娘が所有したもので、金粉や金箔を使う蒔絵という手法で作られた漆の嫁入り道具があります。楽器に関しては、日本の伝統的な音楽を演奏するために使われたすばらしい品々だと言えます。

作品は主に「江戸時代」、もしくは、250年以上にわたって日本を統治し、鎖国をして平和を実現した徳川家の名から「徳川時代」と呼ばれる時代のものです。加えて、鎌倉時代の木製の小像のペアや室町時代の刃といったさらに古い作品もあります。

2017年に旧サン・グレゴリオ教会美術館へのコレクション移転事業が始まりました。旧サン・グレゴリオ教会はカ・ペーザロ美術館にあるコレクションの設置に適した場所で、この移転により、エンリコ・ディ・ボルボーネが集めた東南アジア、中国、日本の貴重な作品をより広いスペースで鑑賞することができるようになります。実際に、展示スペースはカ・ペーザロ宮殿4階の640平方メートルから、旧サン・グレゴリオ教会では1100平方メートル以上に拡張されることになります。

 

考サイト 

Il Palazzo - Ca' Pesaro

Museo d'Arte orientale | Direzione regionale Musei Veneto
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